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聖イグナチオに導かれて聖書の場面を観想する(1A)【ご託身(1)】

ルカ福音の1章1節から38節に関わる観想を聖イグナチオは、次の構成と方法において敬虔に行う祈り方に招いています。
(『霊操』101番-109番を参照。(注1))聖人が招いている構成と方法の枠組みは、以下の通りです。

  • 準備の祈り
  • 3つの準備考察(想像による状況設定を含む)
  • 観想の本体部
  • 結びの対話

この枠組みを念頭に置いた上で、以下に示される聖人の原文の形(注2)に極力沿って祈ってみましょう。


準備の祈り

自分のあらゆる意向と行動と働きが、ひたすら主なる神への奉仕と賛美だけに向けられるよう、主の助けを願う。

  • 第一の準備
    これから観想する内容をまとめること。
    ここでは、神の三つのペルソナが、人々で満ちた地球の全面を眺め、そして人々がみな地獄に落ちるのをご覧になり、人類を救うため第二のペルソナが人間となることを永遠から決められたことである。
    そして、時が満ち、天使ガブリエルを聖母のもとに遣わされた様子を観想する。

  • 第二の準備
    見えるように場所を設定すること。
    ここでは、たくさんの、そして多様な民族が住む広々とした地球の表面を見ること。
    またその後、とくにガリラヤ地方のナザレという町にある聖母の家と部屋を見る。

  • 第三の準備
    望んでいるものを願うこと。
    ここでは、いっそう主を愛し主に従えるよう、私のために人となられた主を深く知ることを願う。

観想の本体部

以上の【準備の祈り】と【3つの準備考察】を済ませてから、黙想(観想)の本体部に入ります。

  • 要点第一(本体部の第一)
    観想におけるあれこれの人物を見ること。
    まず、服装と動作の様子が非常に異なる地上の人々を見る。その中には白人もいれば黒人もいる。
    ある人は平和のうちに、ある人は、戦争のさ中におり、ある人は泣き、ある人は、笑っている。
    健康な人もいれば、病人もいる。
    生まれたばかりの者もおれば、死にかかっている者もいる。
    そのような様子を見る。
    第二には、自分の王座、主なる神のみ座についておられる三位一体を見る。
    三つのペルソナが、地球の全面とひどい盲目に陥ったすべての民を見られ、彼らが死んで地獄に落ちていくのを見られることを考察する。
    第三は、聖母と彼女に挨拶する天使を見、そこから益を収めるため自分に目を向ける。

  • 要点第二(本体部の第二)
    地上の人々が、話している言葉を聴くこと、すなわち彼ら互いの話、また呪いや冒涜などの言葉を聴く。
    同じように、神の三つのペルソナが語り合っておられること。
    すなわち「人間をあがなおう」などの言葉を聴く。
    次に、天使と聖母が語り合う言葉を聴く。
    その後、その言葉から益を収めるため自分に目を向ける。

  • 要点第三(本体部の第三)
    それから人々が地上で行っていることを見る。
    たとえば、人を傷つけたり殺したりして地獄に落ちていく様子などを見る。
    またその後、神の三つのペルソナが行われる業、すなわち受肉を実行されることなどを見る。
    そして同じく、天使と聖母のしていることを見る。
    すなわち天使が使者の役目を果たし、聖母がへりくだって主なる神に感謝するのを見る。
    その後、このひとつひとつのことから何らかの益を収めるため自分に目を向ける。

対話

最後には対話すべきである。
神の三つのペルソナまたは、人となられた永遠のみことば、あるいは、わが母なる聖母マリアに申し上げるべきことを考え、今しがた誕生なさったわが主にいっそう従い倣うため、自分の中で感じているところによって願うのである。
主の祈りを唱える。
(※:聖イグナチオは、この観想を繰り返して行うことを勧めており、その繰り返しの観想においては、神(聖母を含む)との対話を深めることへと導きます)
つまり、次のような対話です。
慰めかすさみ、または霊的感動をより深く感じた点に注意し、そこにとどまる。
そして、次に述べる方法で三つの対話をする。

  • 第一対話
    聖母との対話である。自分の御子であり主である方から次のことのために恵みをとりなしてくださるよう、聖母にお願いする。
    つまり、私が今しがた、誕生なさったわが主にいっそう従い倣うため、自分の中で感じているところによって願う。
    次いで、天使祝詞。

  • 第二対話
    御父からその恵みをとりなしてくださるように御子に同じことを願う。
    次いで、「アニマ・クリスティ」。

  • 第三対話
    永遠の主自身がその恵みを与えてくださるよう御父に同じことを願う。
    次いで、主の祈り。(注3)

注1:

聖イグナチオは、真剣に生き方を向上させようとする熱心な信仰者のために、おおよそ30日を使う徹底的な黙想のプログラムをまとめました。
そのプログラムの骨子を成文化して『霊操』という本にしました。
この本には、一項目ずつに通し番号が付けられていて、その総数は370であり、ここに抜粋した101番-109番は、したがって本全体の開巻から3分の1ほど進んだところに位置することもわかります。

注2:

日本語の翻訳は、幾つか存在します。
ここではイエズス会司祭ホセ・ミゲル・バラ師が1992年に改訂訳(聖イグナチオの自筆テキストから)を出版された新世社版から引用しました。

注3:

まず、聖母に向って、第二にキリストに向って、第三におん父に向って、という3段階で対話を上昇させて行く組み立てが最も詳細に示されているのは、『霊操』61番-63番です。
101番-109番における対話の示し方からして、この61番-63番にある具体性にのっとるのが最良と思われます。
そこでここには、63番に表現された具体形を適用して表現しました。